おまけ

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洒落にならないぐらいの攻撃に俺は身も心も真っ白だ。これ以上、こんな攻撃を受け続ければ原形を保てないぐらい灰になってしまうだろう。 そうなる前に俺はましろに手を出さない理由を龍に告げる。 「せめて……大学に受かってからって考えているんだよ。それぐらいでましろに追い付けたわけじゃないけど、せめて追い付く為の第1歩を踏み出してからじゃないと、俺にはその資格が無い気がして……」 「つまり、格差婚が嫌だと?」 「婚姻じゃねえけどな!まあ、そんな感じだ。少しでも追い付かねえと、ましろの横に居ていいものなのか自分に自信が持てなくなる」 最初は恥ずかしかったのだが、ここまで言うとそんな気持ちもどこかへ消えていた。それどころか、自らにかけていたプレッシャーを言葉にした事によって、少し楽になった気がする。 それを察してか、龍も納得したようなしないような反応を示してくれた。 「そういう理由ですか……今のままでは空はヒモ街道まっしぐらですからね。それぐらい差があるでしょうし」 「ヒモ街道……そりゃ簡単な道のりじゃねえのは覚悟の上だし、ましろの才能は俺が誰より知っているつもりだ。だからこそ、簡単に手を出せねえんだよ。いまだに俺なんかでいいのか?と自問自答しちまうし……」 「そう考えてしまうのは仕方ありませんね。それぐらい、冬月さんの才能はズバ抜けています。あの才能に見合う人物など、今は居ないでしょうね。今は……ですが」 「今」という言葉を龍は強調するが、それが何を意味するのか俺には解らない。見えない可能性にすがる余裕など俺には無いからだ。 ミコトとかからは「夢見がち」とか言われるが、現実においての俺は正直なところ堅実だ。朝日並みに堅実だろう。 だからこそ、現実の俺が才気溢れるましろの側に居ていいのか?ましろの大事な人になっていいのか本気で考えてしまう。 俺が今まで手を出さないでいたのは、その部分が大きい。それでも自分なりに期限を決めたのは、ましろの気持ちも尊重したかったからだ。 普段から何を考えているのか分からないましろ。だが、俺と居る時に伝わってくる想い……そんなましろの気持ちをないがしろにするわけにはいかなかった。
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