27人が本棚に入れています
本棚に追加
/104ページ
激しく揺れる携帯の画面。そんな画面が急に真っ暗になる。朝日の悲鳴とましろの腐った笑い方の中、「カチャン」という乾いた音をマイクが拾っていた。
どうやら身を守るのに必死な朝日が携帯を飛ばしてしまったらしい。
それを誰かが拾い、キャットファイトを繰り広げる2人にカメラを向ける。
所々、微妙な場面でズームを使い、絶妙なチラリズムを演出したカメラワークだ。
「良い仕事だミコト!お前は男心を知っている!」
『なぜ、あたしだと分かった?』
ミコト以外に男心をくすぐるカメラワークを出来るやつがいるだろうか?
見事とも言えるカメラワークで2人を撮るミコトだった。
そんなミコトの仕事っぷりに気付かない2人は相変わらずだ。一方的に攻めるましろと一方的に守る朝日。
確かにあと一歩でたくしあげが完成しそうな勢いだ。それぐらい、ましろ優勢で試合が進んでいる。
合気道を極める朝日がましろに負けるはずがない。それなのに敗戦濃厚なのは、本気になれない朝日の優しさだろうか?それとも、ましろの腐ったパワーのせいだろうか?
しかし、限界を向かえた朝日により試合は一気に終焉を向かえる。
素早くましろの手首を握った朝日。カメラ越しには気付けないぐらい微かな動きをした瞬間、大きな円を描きながらましろの身体が1回転したのだ。
『……むぎゅ』
『はぁはぁはぁ……』
そういえば漫画で見た事がある……手首を掴んだだけで相手を1回転させるシーンを。
達人クラスの朝日の技に、カメラ越しの俺まで恐怖を覚えてしまう。
『……人って1回転出来るものなのね』
「おう!くるっといくぞ!」
と経験者は語る。
まあ、俺の場合は手首じゃなく足だが……夕日のドラゴンスクリューにより1回転したのは遠くない過去だった。
「あなた方は黒崎姉妹に1回転されなくてはいけない人種なのですか?」
最初のコメントを投稿しよう!