おまけ

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どうやら少しは落ち着いたのか、それとも朝日の技に恐怖を覚えたのか、おとなしく水着を選ぶましろだった。 本来の目的に戻ったからには、携帯を繋いでいる必要は無い。俺も本来の目的である机に戻り問題集に目を向ける。 「まるで、たくしあげに失敗したから仕方なく勉強を始めたように見えますね」 「そりゃ、最低な男だな」 そこまで落ちぶれていない! 地味な貶しに耐えながら勉強を再開する。 しかし、さっきの1件があったせいか今度はなかなか集中出来ずにいた。 そのせいか、余計な事が頭に浮かんでしまう。 「……つーか龍……人の事ばかりでお前はどうなんだよ?」 「主語が無い話に答えれませんが?」 正論で返してきた龍に対し、俺は微かな抵抗で小指を立て龍に向ける。 「下品な行動はそういうのに良い反応を示す人にして下さい」 と言いながら小指を握る。 「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!!」 本気で折られてしまうのでは?指と共に心までへし折られそうになる。 だが、今日の俺は違う。 「お、女の事だよ!人の事ばかり気にして自分はどうなんだよ!知ってるぞ!夏休み前に後輩から告られていたよな!しかも可愛い……畜生、何だよお前は!?」 「何だよはこちらのセリフです」 俺もそんなにゴシップ好きというわけじゃない。それに、やはり人の中にまで踏みいるのは気が退ける。 だが、今ぐらいは。 半分はいたずら心があったのかもしれない。なにより、自分の事を一切話さない龍を知るチャンスに思えたのだ。 正直、俺は龍の事を何も知らない。いや、俺と同類の変態性を持っているのは知っているが、それ以外の私生活、そして過去を全く知らないのだ。 1人暮らしの龍。家には何度も行っている。秘蔵のDVDも幾度となく借りた。 それでも俺は龍を知らないのだ。 知っているのは、中学時代に色々とあり地元を離れここで1人暮ししている事ぐらい。 いつかは話してくれるだろう……そう思いながら今まで来てしまった。今さらな気もするし、過去を知ったところで何かが変わるとも思えない。 だから、こんなゴシップ的な話で龍の内面を知ろうとしたのかもしれない。 少しでも知りたいから。
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