おまけ

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テンションゲージが振り切れた夕日に引っ張られ、女性陣は更衣室へと入っていく。 龍と稲葉先輩は車からシートやパラソルなど私物を運ぶ中、俺は遠くからぼーっと更衣室の方を見ていた。 別に透視能力があるわけじゃないのだから、更衣室の中で着替えをしているみんなの姿を拝みようがない。 かといって覗きなどしてしまえば、社会的に抹殺される前に肉体的に抹殺されるだろう。 俺にできるのは、更衣室から出てきた水着姿を誰よりも早く拝む事だけだ。 内心期待に胸を膨らませているが、それを面に出さないようにあえてぼーっとしている。 そんな俺の横に、俺以上にぼーっとしているましろが立っていた。 「おわっ!?お前も一緒に更衣室に行ったんじゃねえのか?」 「……放尿していたら遅れたわ」 「言い方を濁せ!」 「……聖水を排出していたら遅れたわ」 「あまり濁せてねえよ!」 結局ましろが言いたいのはトイレに行っていて、更衣室に行くのが遅れただけだ。 それならとっとと自分も更衣室に行けばいいのに、なぜか俺の横でぼーっと立っている。 「……ただいま絶賛生着替え」 「だからどうした?」 「……わたし、あの中に入って生きて出てこれるかしら?」 「魔窟かよ!?余計な事をしなけりゃ大丈夫だろ」 「……余計な事……自信無いわ!」 「自信満々に宣言するんじゃねえ!」 「……はぁ……せめて不自然な湯煙や謎の怪光線があれば我慢できると思う」 「放送倫理規定に頼るんじゃねえよ!ほら、早く行かねえと着替え終わっちまうぞ」 「……それは一大事だわ」 その一言がましろの心に火を着けたらしい。 砂場に足をとられず更衣室へスタスタと歩きだす。しかし、そのスピードは尋常じゃない。 「お前は忍者の末裔か!?……さてと、俺もじっくり拝見させて……」 「何を拝見するんだ一ノ瀬……お前はこっちだ!」 「あっあっ稲葉先輩!あ、あと少しで着替えが!着替えがぁぁぁぁぁぁっ!」 絶望したような声を残し、俺は稲葉先輩に引きずられていった。 「ま、ましろさん!そ、そこはダメですーーーーーっ!」 引きずられる俺を追うように、更衣室から朝日の悲鳴が聞こえていた。
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