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深々と埋まった……刺さったと表現してもよいぐらい、俺の顔は砂の中だ。
なんとか引き抜こうと両手に力を入れるが、それでもなかなか抜けないでいる。
窒息死という言葉が頭に浮かんできた俺は、残った力を全て腕に集め全力を出す。
そこまでやって、やっと砂地獄から抜けだせれたのであった。
しかし、勢いのあまった俺は引き抜いた勢いそのままに仰向けに倒れてしまう。
消耗した酸素を身体に取り込み心拍数が正常に戻った俺は、ゆっくりと目を開ける。
その視界には雲ひとつ無い満面の青空……ではなく白い三角形。
一体、俺は何を見ているのだろう?仰向けな俺は、青空以外に見えるものなど無いはずである。
疑問に思った俺は全視力を駆使し、その白い三角形を凝視した。
だが、それが何だったのか確認する事は出来ない。
急に真っ暗になる視界。そして、顔を打ち付ける衝撃……
「兄さん……どうして兄さんの顔が私の真下にあるのでしょうか?」
そう……俺の視界にあった白い三角形は、あろう事か白い水着を着ていた海の……
「これぐらいじゃ記憶を失えませんか?もっと強く踏まなければいけませんか?」
「いいえ、すでに俺のHDはクラッシュしています……兄の威厳と共に……」
周りから見れば、均整のとれた身体に白いセパレートの水着を着た美少女が男の顔面を踏んでいるという特殊な状況だ。
踏まれているのが実の兄という事までは知られてはならない。
そんな周りの視線に気付いた海は、俺の顔から足を離してくれる。
これ以上、海の機嫌を損ねないように俺は何事もなかったように立ち上がる。
そして、海の正面に立ち海を見た。
夕日の水着に近い形状だが下はパレオを巻いており、さっきの俺みたいな状況にならない限りその中を覗く事が出来ない。
全体的に白い水着が海の清純さを表しているようだった。
「兄さん、目が汚らわしいです」
「えっ?いやらしいとかじゃなく、汚らわしいそのもの?」
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