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海とはこんなにも危険な場所だったのだろうか?
肉体も精神も疲弊させてくれる。
それだけのメンバーに囲まれているのだから、疲弊ぐらい仕方ないと言ってしまえばそれまでだが、予想以上の疲弊に俺は立ち尽くすのみだ。
そんな俺を更に疲弊させてくれる。
「いい加減、こちらを手伝ってもらえませんかね?」
熱い日差しを切り裂く冷ややかな声。後ろからかけられた声には、殺気に近い迫力を感じさせる。
「皆さん手伝ってくれているのですが……数少ない肉体要員であるあなたがいなければ効率が悪くて仕方ありません」
声の主など振り向く必要が無いぐらい分かっている。
そして、その主が怒っている事も……
俺を貶さず正論を述べて追い詰めているのがその証拠だ。
当然、そんな龍に逆らう事など出来やしない。
しかし、目の前に立つ白と黒の天使から目を離せないのも事実。
身動き取れない俺を動かしたのは、喉元を鷲掴みし力任せに引きずる筋肉だった。
「行くぞ一ノ瀬」
「い"ぇ"っざーぜんばい……」
握力60kgを軽く超える稲葉先輩に喉元を鷲掴みにされれば、逆らう事は死を意味する。
美少女天国から一気に地獄へ落ちた俺は、力なく引きずられていた。
「……ふぁい……と?」
「何をファイトするんだよ!?」
「……ばーりとぅーど?」
「この2人に勝てるかーっ!」
爽やかな海が一変して血生臭い海に変貌しそうだった。
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