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稲葉先輩が何を目的に「脱げ」と言ったのか真意を理解出来た俺は、言われるがままTシャツだけを脱いだ。
「……はぁはぁ……ないす乳首」
「ピンポイントはやめろ!」
こいつに関しては上半身の裸ぐらい何度か見ている。それなのにピンポイント攻撃をされたら、それはそれで恥ずかしい。
そんな俺以上に恥ずかしいのは……
「はわわっ!いえ、ここは海なのです!海だから上半身裸ぐらい……きゃぁぁぁっ!やっぱり恥ずかしいですーっ!」
「やめて!俺の方が恥ずかしくなる!」
テンション高めの2人に翻弄される俺とは違い、稲葉先輩はじっくりなめ回すように俺の身体を見ていた。
「……熱視線」
「それもやめろ!暑いのに寒気が走る!」
だが、ましろが言う通り稲葉先輩の視線は熱視線と言ってもいいぐらいだ。
そして遂には俺の身体をペタペタ触り始める。
「……はぁはぁ、今こそ男になる瞬間」
「腐った事を言うんじゃねえ!」
邪魔をしているのか?それとも本音が駄々漏れなのか?ましろの言動は俺の背筋に悪寒を感じさせる。
それにも稲葉先輩は動じない。
そして一回り俺の上半身に触れた稲葉先輩は、ニヤッと笑い俺の背中を全力でぶっ叩いた。
「痛ーーーーーっ!!!」
「よし!まだまだだが、勉強で忙しい割にはそれなりに鍛えているな!これなら直ぐに動ける!」
そう、稲葉先輩は俺の身体が勉強で鈍っていないかを確かめていたのだった。
ましろが妄想するような腐った意図など微塵も無い。
「そりゃ、やれるだけはやってますよ。高校3年間のブランクもあるし、なによりピッチャーとバッターじゃ体幹が違いますからね」
「それが分かっていればいい!これなら春が待ち遠しいぞ一ノ瀬!」
大きな笑い声をあげ、背中をビシバシと叩いていた。
本当にこの先輩は俺と一緒に野球をするのを楽しみにしてくれているんだと感じる。そんな求められる嬉しさに俺は……
「……身体を差し出す?」
「出さねえよ!」
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