おまけ

73/104
前へ
/104ページ
次へ
「そんな事より、どうしたんすか瑞希元会長?あれだけ楽しみにしていた海なのに、こんな所で黄昏ちゃって?そんなに俺と一緒に居たいとか?」 「お巡りさ~ん、ここに見境なくナンパする人が居ますよ~……あっ、海ちゃん呼んだ方が良かったかな?かな?」 「大変失礼致しました」 正直、どっちも嫌だ! 「高校卒業してから空くんとゆっくりお話する時間も無かったからね。たまにはこんな時間もいいかなって」 「もう瑞希元会長、寂しいなら寂しいって言ってくれればいつでも駆けつけますのに。そんなに俺と一緒に居たいなんて」 「夕日ちゃ~ん、ここに妄想をこじらせた変態さんが……稲葉くんの方がいいかな?かな?」 「重ね重ね失礼致しました」 どうしてこんなに敵が多いのだろうか? 「うん……寂しいっていうのは当たらずとも遠からずかな?」 時折見せる年相応の表情を瑞希元会長が浮かべていた。 その表情を見てしまったからには、さっきまでの軽口など叩けやしない。 俺は瑞希元会長の話を聞く側に回っていた。 「別に大学が面白く無いわけじゃないんだよ。新しい友達、新しい環境、すっごく新鮮なんだけど……」 徐々に真剣見を帯びてくる瑞希元会長の表情。 そんな表情のまま俺の方を向き、こう聞いてきた。 「どうして空くんはそんなに足掻けるの?」と。 この時俺は瑞希元会長がどうしてこんな事を聞くのか?という疑問より、どうして今更こんな事を聞くのか?それが疑問だった。 瑞希元会長は知っている。 俺が足掻く理由を。 俺の為、そしてましろの為、俺は足掻いている。 それを瑞希元会長は知っているのに何故? 冗談でもからかいでも無いのは、瑞希元会長の表情や雰囲気で分かる。 だから俺は、今の気持ちで足掻く理由を伝えたのだった。
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加