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「出会いって大事だよね~特に空くんは素敵な人ばかりでさ。龍くんとか稲葉くんとか」
「男オンリー?いや、その2人も否定はしませんが、それを言ったら瑞希元会長だって相当なもんっすよ」
「そうなの?」
「何せ俺と同じ時代を生きているんすから!」
「ん……そうだね」
冗談で軽口を叩いたはずなのに、瑞希元会長は納得したような優しい笑みを浮かべ肯定していた。
しかし、その目はどこか遠くを見つめているように俺には見えていたのだ。
それが気のせいだったのか分からないぐらいの短時間で、瑞希元会長はいつもの天真爛漫な笑顔を作り出す。
「うん!そうだね!空くんの言う通りだよ!」
何かに納得したような瑞希元会長。
「そうっすよ!」
ならば俺はそれに合わせるしかなかった。
真意まで読み取れずに。
「じゃあ、ファイナルアンサーだよ!もう1度聞くね。わたしに何かあったり、躓いたりしたら助けてくれるかな?かな?」
「当然!」
考えるまでも無い質問だった。
俺にとって瑞希元会長は、永遠のロリ妖精なだけじゃない。素敵な学園生活を送らせてくれた大事な人なのだから。
願わくば瑞希元会長には躓いて欲しくない。だが、躓かないで送れるほど人生は甘くないだろう。
なら俺は僅かでも力になりたい。
俺にとって瑞希元会長はそういう人なのだ。
この時、俺は知らなかった。知ろうともしなかったのかもしれない。
瑞希元会長が何を欲しがっていたのか……
だが、その答えを俺が無意識に出していたらしい。
みんながいる……
それから半年後、日本を発ち更に数年後、封建的な機構の中で戦い抜く瑞希元会長の心を支える言葉になっていた。
「ありがとね空くん」
吹っ切れたような笑みと、俺の頬に柔らかい唇の感触を残し瑞希元会長は海へと走り出している。
「……………………」
「兄さん……ちょっとお話が……」
「……………………」
余韻に浸る暇もない俺は、あっさりと現実という名の地獄へと突き落とされていた。
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