27人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………………………」
「…………………………」
これが無言の重圧というものなのだろうか?体感重力は界王星並みだ。
そして、晴れ渡っているはずの空なのに、パラソルの中だけは無音の雷鳴が響き渡っている。
まるでパラソル内だけ別世界のようだった。
当然、外観はパラソルを挟んで男女が無言で座っているだけの光景。違和感といえば、普通に膝を崩して座っている女性に対し、男性は背筋を限界まで丸め肩を落とし正座している事だろうか?
まあそれも無理矢理つじつまを合わせれば納得のいく光景だろう。
水着の女性に目をとられていた彼氏が彼女に怒られている……というようなシチュエーションなら、この光景も納得できる。
だが、今の状況はそんなリア充のちょっとした揉め事などではない。
何よりこの2人が兄妹で、さらにはこのみすぼらしく正座をしているのが兄だと誰が想像できるだろうか?
無理難題過ぎる!
これはもう公開処刑なのだ。
本来ならば、パラソルを横切る一般人は9割方海の方を見るだろう。
シスコンというフィルターを介さずとも、整った顔付きや均整の取れたスタイルは男性のみならず女性すら振り替えるぐらいだ。その上、本人に自覚は無いらしいが相手の目を惹き付けるオーラらしきものも持っている。
しかし今、パラソルを横切る人の視線は俺に一点集中だ。
あまりの視線の多さに聞こえるはずの無い心の声が聞こえてくる。
頑張って!……と
そんな声援をパワーに背筋を伸ばして海を見る。
「…………………………」
無言の笑み……その裏にある修羅を相手に、一般人の声援など無に等しかった。
再び俺は背を丸め正座しながら、幾数億ある砂粒を見つめだした。
最初のコメントを投稿しよう!