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「それにしても、どうしたのでしょうかね?兄さんの説明では詳細まで分かりませんが、何か悩みでもあるんでしょうか瑞希元会長は?」
「まあ、話を聞いていた俺でさえ何やらさっぱりだからな。それでも納得したみたいだから結果オーライじゃねえか?」
「また行き当たりばったりな事を言って惑わしたのですか兄さん?」
「大変失礼な!そして的確な答えをありがとう!」
「やっぱり」
あきれたようなセリフを吐きながらも、海の表情は笑みを浮かべていた。
「何でしょうかね……何も考えず、気持ちも察せず、特に気の利いた事を言うでも無い本当にその場しのぎの事しか言えない兄さんなのに、それが正解だったりするんですよね」
「誉めてるの?貶してるの?」
「さあ?どちらでしょうかね?」
どうやら俺はからかわれているようだった。
その証拠に浮かべる笑みは、家に居る時のようなリラックスした笑みだ。
端正な顔立ち、落ち着いた口調、動じない精神力などから海はどうしてもクールなイメージがまとわりつく。
海自身それを知ってか、人前ではクールを演じている部分も少なからずある。
周りのイメージを壊さぬようにだ。
本質的にはクールと言えるだろう性格だからそこまで負担にはなっていないだろうが、やはり周りの目にストレスを感じているのだろう。
家に居る時は気を抜いたとまでは
いかないが、クールな姿は成りを潜め自然体の笑みを浮かべる事がよくある。
どちらかといえば、俺はそんな自然体の海の方が好きだった。
気を張らずありのままの海。その時だけは、可愛い妹として接する事が出来るのだ。
普段が可愛くないというわけじゃない。俺から見てもクールな姿に、心配してしまっているから。
いつでも周りに気を使い、パーフェクトな姿を維持する。そんな海を俺は何とかしてあげたいと、ずっと思っていた。
しかし、どうにもできの悪い愚兄である俺は海の負担でしかない気がしてならない。
だからこそ、俺は出来る範囲で海を守りたいと常日頃から思っていた。
これをシスコンと呼ぶなら呼べばいい。
どんな事を言われようが、海を……妹を大事に思う気持ちだけは譲れなかった。
「俺は海の事を大事に思っているからな!」
「いきなり何ですか兄さん?キモチワルイ」
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