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どんなに「キモチワルイ」と言われようが、この気持ちだけは揺るがない!
だが、精神的には揺れてしまう。
それは仕方ないだろう。実妹とはいえ、美人さんに「キモチワルイ」と言われれば……
とうとう俺は、正座の体勢から膝を抱えて体育座りへと姿勢を変えていた。
「何ですか兄さん?自分は落ち込んでいますのアピールですか?」
そんなアピールなど通用する相手じゃなかった。結局俺は正座に姿勢を戻されてしまう。
どうやらSっ気が覚醒してしまった海に、これ以上何を言おうが何をしようが無駄だと感じた俺は、綺麗な正座をしたまま無言で海を見つめていた。
「美人さんがいらっしゃったのですか兄さん?」
……もう俺には黙祷するしか出来なかった。
目を瞑り瞼の裏の暗闇の中であらゆる煩悩を消し去り、無心になるよう集中する。
元々、集中力については自分でも多少の自信がある。本気を出せば周りから聞こえる女性の黄色い声も遮断できるぐらいだ。
それだけの集中力を発揮しながらも、肩口にかかる微かな吐息にだけは無心を貫けなかった。
俺は目を開け吐息のかかる肩口へ視線を向ける。
そこには近距離で俺の肩を見る海の顔があった。
正確には肩を見ているのではない。
昔の傷……手術痕を見ていたのだった。
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