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「兄さん、溺死と生き埋めと干からびる……選択する権利を与えますよ」
「……生き埋めでお願いします」
それがとりあえず生存しており、救出される可能性が1番高いと判断したからであった。
「まったく……兄さんは私の大切な物を奪ってばかりですね」
いたずらっぽい言い回し。本気で怒っていない証拠だろう。一瞬は本気で怒ったかもしれないが、俺がなぜこのような愚行に走ったのか瞬時に理解してくれたのである。
視線が俺の傷痕から離れていないのがその証だ。
「凄い言い回しだな海……とても俺が鬼畜な兄に聞こえるぞ」
「実際そうじゃないですか兄さんは。私の初お姫様抱っこも奪ってくれたし、何より……唇まで……」
そう言った海は、やっと肩の傷痕から視線を外し唇を指で軽く押さえながら斜め下へ視線を向ける。
ほんのり赤みがかった顔と困ったような表情が、俺の心臓を高鳴らせた。
そんな可愛い姿を見せられれば、俺は海が実の妹である事を忘れてしまう。
まあ、年に365回ほど忘れるが。
当然、このようなシチュエーションだ。それにヤツが現れないはずがない。
いつものように風を切り、いつものように宙を舞い、いつものように蹴りを放つ。
「貴様は妹を恥ずかしがらせて楽しんでいるのかーっ!」
「ぐはぁっ!低空ドロップキックだと!」
もうこいつは柔道家などではない!一介の女子プロレスラーだ!
夕日のドロップキックでのダメージでぴくぴくしている俺を横目に、夕日は海に一言二言声を掛け去っていった。
「本当に夕日先輩は兄さんの対するセンサーでもついているのでしょうか?」
「誰かそのセンサーを破壊してくれ!」
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