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そんなホワイトアウトを払い除けるように俺は右腕をぐるぐる回した。
そして伝えたかったのだ。
もう俺の右肩は大丈夫だと。
そんな俺の思いを海は汲み取ってくれる。
「兄さん……子供みたいですよ。でも、ありがとうございます」
これで全てが無になるわけじゃない。これから先も怪我をした肩と俺は付き合わなければならないし、海は罪悪感を抱き続けるだろう。
それでも俺達は前に進まなければならない。立ち止まってなどいられないのだ。
特に俺はこの先やらねばならぬ事が明確になっている。
大学に行き、再びバッターとして野球を始める。
それは海の呪縛を解き放つ最短の道筋。
肩の負担が少ないバッターとし大成するのだ。
元ピッチャーという事を忘れるぐらい。
それが俺と海の呪縛を解く道。前に進む道なのだ。
その決意は自然と表情に現れ、それを見ていた海も感じとる。
そして、海自身も決意を決めた表情を浮かべたのであった。
「兄さん……私、医師になろうと思います」
「産婦人科医か!?」
「それも大事な医師ですが、とりあえず兄さんは檻の付いた個室へ引っ越して下さい」
それは特殊な病棟にしかない!
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