おまけ

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あえて理由を聞くような事を俺はしなかった。 母親が医師である事を考えれば、娘が医師を目指すというのは自然な流れであろうと思うし、以前から海も医療系の仕事がしたいと言っていたから。 そんな海が医師一本に絞っただけとしか思っていなかった。 「ふぅ……口にすると後戻り出来ないものですね兄さん」 「後戻りする気も無いくせに」 「最初から後戻りする事など考えて言う人などいませんよ兄さん。いつでも『有言実行』な兄さんならわらりますよね」 「不言実行」な妹「有言実行」な兄。バランスが良さげな兄妹だが、それは海のフィルターが雲っているのだろう。 俺は決して「有言実行」ではない。細かく言えば「有言」ではあるが「実行」しきれてはいないのである。結果を残す「実行」がしきれていないのだ。 「おいおい、結果の伴わない実行じゃ意味無いだろ。俺のはただの『有言』でしかないぞ」 「……口だけ男」 ぼそっと耳元で囁かれる暴言。その主は、俺がこれからする行動を読んでか一目散に去っていった。 「ましろの野郎!暴言を吐く為だけに現れたのか!?」 「最低です兄さん」 「違っ!」 言葉上、同じ意味なはずなのに、どうしてこうも好感度がダウンしてしまうのだろうか? そんな不条理と、この状況を作りだしたましろを呪いたくなり睨み付ける。 「……熱視線感知」 「そりゃセンサーがぶっ壊れているな!熱視線じゃなく冷ややかな視線だよ!」 その冷ややかな視線が隣に座る海から向けられている事までは気付けなかった。
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