桜と瑠璃

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「どうして瑠璃お姉さまがあんな男と」 「ああ、噂で聞いた。 大層太った男が女学校の前で大声で騒いでいたそうだな」 龍彦様は口元を吊り上げました。桜子様と違い癇癪を起されることはありませんが、常に他人を見下している酷薄な質でした。 瑠璃子様のお父様が事業を失敗されて、その窮地を救ったのが遠縁のあの男性だとか。まんまと婚約者の座に収まったそうです。 口さがない父兄は『金で家名と娘を売った』と陰で言っておりました。 生徒たちは瑠璃子様に同情していましたが、その豚のような男性が関西弁で馴れ馴れしく話しかけて来るものですから嫌がっておりました。 桜子様は 『あの男性は瑠璃お姉さまに酷いことをなさっているんでしょう。あんないやらしい目で女学生を見るなんて紳士とは思えませんわ。お姉さまが汚されるのは耐えられません。桜子に辛いお気持ちを話して下さい』 お手紙にこんな歌を添えられました。 『天上の花に近づく毒蛇や 雷の矢に身を焼かれませ』 【高貴な瑠璃お姉さまに触れようとするあの男は毒なので、雷(いかづち)に焼かれてしまえば良いのです。】
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