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「……はい、仰せのままに、……桜子様」
瑠璃子様の目は黒硝子のように艶を帯びていましたが、虚ろを宿しておりました。
壊れてしまった瑠璃子様はこの屋敷の愛玩人形のようでした。
桜子様の欲望は留まることを知らず、龍彦様もこの遊戯の虜となりました。
そんな歪んだ淫蕩な日々が続くかと思われたのですが
熟れすぎた果実が爆ぜるかのように突然の終わりが訪れました。
翌年の九月一日。
帝都を襲った激震と混乱の中で
瑠璃子様は姿を消されました。
翌日、焼け落ちた黒目邸に立つ桜子様の
色のない唇から零れたのは
「我が宿を……吹き散らす……とも……」
帰る家を失った瑠璃子様の詠まれた、いつぞやのお歌でございました。
【完】
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