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「えっ?そうなんですか?」 「ええ。坂の上にある大学でしょう?」 確かに私の通う大学は急な坂を上った先にある。 「あ…でも、よかったです。私、実家から出てきて一人暮らしを始めてすぐなので、この辺りのことも学校のこともまだ分からなくて」 「こんな田舎で一人暮らし。大変ですねぇ」 眉尻を下げてメガネの奥から見つめてくる茶色の瞳に癒される。 「僕でよければ相談お聞きしますから。またいらしてくださいね」 ーーーこの一言が私の生活を変えた。 帰り際に、彼は店の外まで出て私を見送ってくれた。 「夜道は危ないので、気を付けて。よろしければお送りしましょうか?」 ふわふわ髪を揺らして心配そうに問う彼に丁寧に頭を下げる。 「大丈夫です。ーーあの、送っていただく代わりというのも何ですけど…お名前、教えてもらえますか?私は吉野 ももっていいます」 彼はゆるく目を細めて、私をまっすぐ目を合わせた。 「僕は塩見 日向(ひなた)と申します。…よろしく、吉野ももさん」 穏やかに呼ばれた自分の名前に、何故か心臓が小さく跳ねた。 「ありがとうございます!また来ます!」 こうして、私と塩見さんは出会った。
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