第1章

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今は『見せパン』というものがあるらしい。 まんま、見せる用のパンツ。 パンツ自体、見られたくないものではないのかと思うのだが、彼女らにとっては違うらしい。 昔は制服の下にブルマを穿いていた。 今は短パンと言うらしい。 ここ最近は、ブルマというもの自体、ある種の専門店でしか手に入らないという。 それもまたどういうことなんだろうと首を傾げるが、今は見られたくないパンツの上に、『見せパン』を穿くのが主流らしいのだ。 どうにも理解不能な時代の流れというものに、自分もやはり年を取ってしまったのかと愁いながら、相変わらず笑う度に膝が揺れて、今にも中が覗けそうな女の子の足を、本人よりもハラハラしながら弁当を頬張っていた。 「見てんじゃねぇよ、ババァ」 バッチリと化粧を施された顔は、アイラインとつけまつげで真っ黒に塗りつぶされている。   なので、目は大きいのに、全部が黒目のようになっているから、何処を見ているのか分からなくて、 思わず自分の後ろを振り返るというお約束をかましてしまった。 「バッくれてんじゃねえよ。おめぇだよ、おめえ。てか、後ろ木しか生えてねえだろ。面白えことしてんじゃねえよ、おばさん」 流石に突っ込みの早さは現代っ子だった。 ついでに言葉の汚さも、きっと今風。 「さっきからじろじろじろじろ人のこと見やがって。気が散るんだよ。どっか行けばあ?」 いや行けと言われても。弁当食べている途中だし。
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