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すると堰きとめられた負の感情が僕の中でグルグルと渦巻いて別の捌(は)け口を探し、結果涙として出てきたみたいだった。
視界が滲む。
琥「う"っっ……ぐっ……ぅぅ…っ」
湊「!?
…あッ……。
え、ぁな、かないで……くれ…。
虐めたいワケでも、泣かせたいワケでもないんだ……。
で、もお前に『嫌い』って言われるのは……その…」
こういうのはあんまりキャラじゃねえんだけど、と前置きした相手が自分の胸に手を当てて再び口を開く。
湊「ここが、痛い。
すげえ痛い」
琥「…!」
凄く切ない顔でこちらを見てくる湊に、さっきまで気が動転していたのが嘘のように段々冷静になってきた。
僕、たかがあんな事で何を大騒ぎして………
琥「……っあ、ご、ごめん……。
あの、変に……騒ぎ立てて……しまって。
ごめんなさい…。
びっ、びっくりして……だ、から…」
湊「……!
琥珀……。」
身体を起こして涙を袖で拭いながら、先程湊にしてしまった言動の数々を思い起こすと自然と声が萎んだ。
琥「思いっきり蹴って……ごめんなさい。
嫌いって、言ってしまって……ごめんなさい。
あの、嫌いじゃないです、すみません」
頭を下げようとするとそれを遮るように、湊が僕の顔に手を添えて、親指で瞼を撫でられた。
湊「いや……俺が悪かった。
それと……その、図々しいのは百も承知で言うんだが、『嫌いじゃない』じゃなくて、『好き』って…言って欲しい……。
結構、今…いろんな意味でメンタルやられてる……から」
苦笑する湊に僕はようやく自然に笑うことができた。
琥「……湊、好き……です」
湊「……ん。
ありがとう」
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