さでぃすてぃっくなヤツめ~っ

49/60
前へ
/910ページ
次へ
琥「嫌だよ…」 美「キミの意見は聞いていない。早くして」 「プッ…! 綺麗な友情だねー?」 琥「!」 吹き出したように笑った目の前の人物が、僕の掴んでいた右手をグイッと上に引っ張り上げてきた。 必然的に僕は右手を挙げて、爪先立ちに近い状態になる。 美「! 他人を巻き込むのはキミ達にとっても得策じゃないって、分からないワケ? サルみたいな思考回路してるね」 美裕くん……焦ってくれてる……? いつもより声が大きくて早口だし、瞳が揺れてる。 僕は頭でそんな事を考えていた。 「おーっ?珍しく焦ってるね? この子が大事?」 可笑しそうに顔を歪めて笑う人が、美裕くんにそう言ってから僕の方を向き直る。 「友達助けて欲しい?」 琥「は、はい…!」 助けてくれるのですかよ!マジ太っ腹ですな! とか思ってた僕はホントに甘々の甘ちゃんでした。 「じゃあ滝野くんの代わりになれる?」 琥「……ぇ?」 美「……! そんな事僕が許さないッ!!」 !! 思いもよらない声に僕は思わず、質問内容も一瞬忘れ、その声の主に目をやった。 え…?(汗) 今の、美裕くん…? 部屋の壁に吸い込まれるように消えていく音に、信じられなくて硬直する。 大声出したの、初めて聞いた……。 俯いていて表情は全く分からないけど、僕のために行動してくれた事はすぐ分かる。 琥「……なれます。僕、代わりになります」 「ハハッ!凄い凄い!偉いねー!」 「良かったねっ!滝野くーん? 解放だってえ」 ヒョイッと五人が美裕くんの上から一斉に退くと、今まで人影で見えていなかった彼の状態がよく見てとれた。 歪(いびつ)な髪型で、もう押さえつけられていないのに僕を床に伏せたまま硬直して見上げている。 でも、数秒経つと下を俯いてヨロッと立ち上がった美裕くん。 それと同時にハラハラと切られた髪の毛が床に落ちる。 琥「美裕くん…大丈…っ……!」 美「!?」 僕が俯いている美裕くんの腕を取って、そう言おうとした瞬間、後ろから凄い力で首根っこを掴まれてそのまま腕を掴んだままだった美裕くん諸共(もろとも)準備室から放り出された。 バシャァン 琥「ったぁ…」
/910ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2540人が本棚に入れています
本棚に追加