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今まで楽観的に見てた自分を呪いつつ、涙で濡れた自分の指を見て目を見張る相手を俺は胸の中に抱き込んだ。
美「!
ちょっと…」
俺の胸を押し返そうとする手は絆創膏だらけ。茶色がかった色素の薄い髪は変に切り揃えられている。
それを見ると罪悪感に苛まれた。
陸「俺……気づかなくて悪かった。こんなんされて何も思わねーワケねぇよな。
けどお前、いっつも無表情で感情出さねーからわかんねーんだよ。
苦しいならそう言え!泣きたいならワァワァ泣け!
全部自分の中にしまうなよ!」
美「!
別に…しまい込んだつもりは毛頭無…っ」
陸「ほら、しゃくり上げた」
美「し、知らなっ…いっ!」
手を添えた背中が震えたのに苦笑して、背中をさすった。
美「別にっ…赤の他人に何を言われてもされようとも、平気だと思った…。
だけど…っす、こし痛かった、かもしれない……心臓が針で突かれたようなっ痛みだった」
陸「ん。」
美「レイタは…っ意味が分からないんだ。
あの日レイタが僕に言ったことは僕も正しいと思う…。
だから、傷付けないように一緒に居ないようにしたのに……っ、次の日から手のひらを返したように謝ってくる。
行動が不合理過ぎて僕にはレイタが分からない……っ。
だけど……っ、それからずっと事あるごとに二人して僕の所へ来てくれるのは…正直嬉しかっ…だけど、またそう思ってる自分の不合理さも嫌だった…っ」
陸「そっか」
こんな感情を露わにするみゆは初めて見る。
ああ……そうか。
変わったやつだとは思ってたけど、そんな事は無い。
根はこいつもフッツーの人間だ。
苛められりゃあ悲しいし、ダチと喧嘩だってする。
それでくよくよ悩んだりだってする。
陸「ロボットじゃねーんだから、当たり前だろ。
合理的に生きること自体、無理だろ普通」
まだ何かを言おうとしたが、どうせまた哲学的な事を言いだすのが目に見えたから俺はパーカーをそいつの頭にバサッと掛けて立ち上がった。
美「…!」
陸「うっし!
もう湿っぽい話は終了!
寮、戻るぞ!」
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