195人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
桃は、すでに起きていて、
ベッドに腰をかけたまま、
ゆったりと顔を上げこちらを見た。
「おはよう。杏」
透けるような白い肌。
クリッとした琥珀色のキレイな瞳。
ゆるいウエーブのかかった茶色い髪は、
腰のあたりまでゆったりと伸びている。
「昨日はちょっと寝付けなかったから、まだ眠くて・・」
そう言いながら、ゆっくりと、ベッドから立ち上がった。
「そうですか。無理もありません」
私が桃に仕えて、もう何年になるだろう・・。
小さい頃は姉妹のように育っていたけれど、
桃が12歳。私が15歳になったとき、
私は、桃専属のメイドとして働くことになった。
生まれる前から決まっていた宿命。
だけど、
私は桃のそばにいれることが、
ただただ嬉しかった。
「家のためにお見合いなんて、やっぱり乗り気がしないな。
杏。代わりに行ってきてよ」
「出来ることなら、私もそうしたいくらいです。
だけどお相手はあの菱沼財閥の御子息の武史様です。
見た目も経済力も将来性も
これ以上の方は見当たりません」
大きくため息をついた桃は
しぶしぶと言った表情で、私に一歩近づいた。
「・・・着替え、手伝ってくれる?」
「はい。もちろん」
最初のコメントを投稿しよう!