桃と杏

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桃は、すでに起きていて、 ベッドに腰をかけたまま、 ゆったりと顔を上げこちらを見た。 「おはよう。杏」 透けるような白い肌。 クリッとした琥珀色のキレイな瞳。 ゆるいウエーブのかかった茶色い髪は、 腰のあたりまでゆったりと伸びている。 「昨日はちょっと寝付けなかったから、まだ眠くて・・」 そう言いながら、ゆっくりと、ベッドから立ち上がった。 「そうですか。無理もありません」 私が桃に仕えて、もう何年になるだろう・・。 小さい頃は姉妹のように育っていたけれど、 桃が12歳。私が15歳になったとき、 私は、桃専属のメイドとして働くことになった。 生まれる前から決まっていた宿命。 だけど、 私は桃のそばにいれることが、 ただただ嬉しかった。 「家のためにお見合いなんて、やっぱり乗り気がしないな。 杏。代わりに行ってきてよ」 「出来ることなら、私もそうしたいくらいです。 だけどお相手はあの菱沼財閥の御子息の武史様です。 見た目も経済力も将来性も これ以上の方は見当たりません」 大きくため息をついた桃は しぶしぶと言った表情で、私に一歩近づいた。 「・・・着替え、手伝ってくれる?」 「はい。もちろん」
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