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『イブの夜に』
…電話の向こう、彼の声。
『必ず会いに行くから…』
…今でも鮮明に覚えている。
忘れることなんて出来ない。
大切な約束…。
「………」
約束の場所は駅。
時間は夜7時。
色めき立つ街の彩りも消え
真夜中
遠くを見つめひたすら
彼の姿を探した。
彼は来る。きっと…
約束を破るなんてこと
彼はしない。
だけど
イブの夜はもう
終わろうとしている。
「寒…」
手袋をしていない手が冷たくて…
両手を合わせて口元に持っていく。
はぁ…と
自分の白い息を吹きかけた。
冷たくなっていく身体。
もう感覚が無くなるぐらい
ここに居る。
遠くを、見つめる。
行き交う人の流れは途絶え
まるで暗闇が
悲しさと寂しさと不安を連れて
私に迫るようで…
恐怖と孤独から逃げるように
私は現実から目を逸らし
下を向いた。
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