122人が本棚に入れています
本棚に追加
柔らかい雪の上、応答のないスマホは私の手から滑り落ち静かに沈んだ。
身体が動かない。
冷たく、凍りついてる。
「…美雪…」
私の名前を呼ぶ琴美の声が遠い。
「……本当はね…私、
ちゃんとどこかで…」
気づいてた。でも…
認めたくなかった。
それなのに…
辛い事実がこれは現実だと、
私を攻め立てる。
「……電話をかけても、
もう…彼には……」
すがり付くように琴実を抱きしめた。
「…美雪……」
「……繋がらない…
もう、冬夜にはっ…冬っ……!」
「………」
琴美は無言で私をぎゅっと抱きしめ返してくれた。
『美雪ごめんな…』
「…うっ、わぁあぁっ!!!」
彼の声を思い出して、場所をはばからず私は子供みたいに泣いた。
悲しすぎて苦しくて、
引き裂かれたみたいに痛くて、心の中はぽっかり穴があいて暗闇に占拠されているというのに、
彼女の肩越しに見る景色は
一面雪で真っ白で
涙が滲むと光が反射して
雪結晶の模様に目の前を煌めかせていた。
最初のコメントを投稿しよう!