・ °* イブの夜に *° ・

3/34
前へ
/36ページ
次へ
悴む両の手でしがみつくように小さな機械を握り締めた。 何の音も鳴らない。 何も映し出さない。 手に収まる小さなスマホ… 彼からの連絡は…ない。 「……ふふ。 去年のイブとおんなじ…」 そう呟いた時 ひらり…と 一片白い雪が 私の手の甲に舞い降りた。 冷えきった私の手にその雪はしばらく留まり、そしてそっと 消えた。 「……待って…!」 夜空を仰ぎ見た。 何も映し出さない漆黒の闇から降り続ける粉雪の中、必死になって私は探した。 大切なものを、失いたくなくて。 この現実を受け入れたくなくて… 彼へと繋がる唯一の、 ひとひらの雪結晶を求めて。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

122人が本棚に入れています
本棚に追加