122人が本棚に入れています
本棚に追加
悴む両の手でしがみつくように小さな機械を握り締めた。
何の音も鳴らない。
何も映し出さない。
手に収まる小さなスマホ…
彼からの連絡は…ない。
「……ふふ。
去年のイブとおんなじ…」
そう呟いた時
ひらり…と
一片白い雪が
私の手の甲に舞い降りた。
冷えきった私の手にその雪はしばらく留まり、そしてそっと
消えた。
「……待って…!」
夜空を仰ぎ見た。
何も映し出さない漆黒の闇から降り続ける粉雪の中、必死になって私は探した。
大切なものを、失いたくなくて。
この現実を受け入れたくなくて…
彼へと繋がる唯一の、
ひとひらの雪結晶を求めて。
最初のコメントを投稿しよう!