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「…美雪!」
…声のする方へ顔を向けると、
彼がいた。
スーツ姿にグレイのコートを羽織って、マフラーも手袋もせずに人混みを掻き分け、彼は私の元へ近寄ってくる。
しゃがみ込んでいた私は思わず立ち上がり、そのまま彼の方へ近づいて行った。
「ごめん。待たせた」
身体の奥深く、芯まで冷えきっていた私の身体は、
彼の瞳、声、表情、しぐさ…
一つ一つに化学反応して熱を取り戻していく。
「……うん、待った」
すねた顔で見上げると、
彼は少し困った表情を浮かべた。
「…本当にごめん。
ケーキ買ってきたから。生クリームたっぷりのケーキと、チョコレートケーキ」
「…ホール、二つ分!?」
彼はケーキが入った箱を二つ胸元まで持ち上げて、にかっと笑った。
「今日は俺たちの誕生日だからね」
さも当然と言って退ける彼を見て、自然と私の顔から笑顔がこぼれた。
そう。今日は、
クリスマスイブ。
そして
私美雪と、
彼冬夜(とうや)の誕生日だった。
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