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「ちょ、人前で美雪大胆…」
「……人なんて、ほとんどもう居ないじゃん。いいの!
私が今、こうしていたいんだから…」
冷たいスーツの上に頬を寄せ、冬夜の匂いに包まれる。
ひらり……
ひとひらの雪が私の目の前に降りてきて、彼のスーツに留まった。
あった。
私が捜し求めていた大切なもの…
確かにそこに幸せが…ある。
私はその幸せを確かめるように
もう、一生
離れないように…
…降り続けては積ることなく消えていく
粉雪のように、
彼が消えて
居なくならないように…
ぎゅっと抱きしめた。
…プルルル……と
どこか遠くで電話が鳴っている。
そう頭の片隅で認識したけれど私には関係ないと、彼をそのまま抱きしめ続けた。
か細いその音は、
暫くすると鳴り止んだ。
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