金花と煌めく

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夜明けまで取り巻き達と宴を開いていた帰り。空楽は朝焼けのもとに浮かんだ雲を踏んでいる心持ちで歩いていた。 近道をしようと入り込んだ草叢。 霧の帳をくぐっていると、炎が宙を飛んでいた。捕まえようと手探りで進めば、それは赤い花だった。 鳥の羽に似た眩しい黄みの葉に、蝶が止まっているような四弁の花。 地表から立ち上る焔の様をした花群に、空楽はすっかり囲まれていた。 どちらから入って、どちらへ抜けようとしていたのか。空楽は居所を失って首を振り、天を仰ぎながら歩いた。 花の香は酒の味よりも芳しく、空楽はにやけて、へらへらと笑う。 まさしく、一切の憂いのない夢という名の花。 花の影に人の気配がした。空楽が焦り、抜け出た先には水草ばかりの沼が広がっていた。 空楽は立ち尽くした。沼の湿気が愉悦を冷ます。冴えが戻った頭で辺りを見遣れば、沼の縁に座り込む者がいた。 己が見たのは、あの人影か。空楽は奇妙な腹立ちを覚え、肩を怒らせて近づいた。 被っている頭巾で体が半ば、隠れていた。あれは子供か、それとも女か。ちょっと大きな声を出してやれば、泣いて何処へ逃げ去るだろう。 空楽は勇んで息を吸い込んだ。
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