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二人の誕生日から数日経った頃、登校日の為二人は久々に制服を纏い
母校である城翔中学に一緒に向かった。
二人が教室に入ると、一人の女子生徒がこちらに向かってきた。
「ナツー!!
助けて!!」
「はっ!?」
女子生徒はいきなりナツに抱き着いた。
女子生徒の名前は吉川美樹[ヨシカワ ミキ]。
城翔中学のソフト部キャプテンだ。
「美樹?どうした?」
ナツは、自分に抱き着いた美樹を自分から剥がしながらそう聞いた。
「晴がケガして…
ねぇ!ナツ!
今度こそ、お願い!
ソフト部に入ってよ!」
ナツは中学に入りたての頃、美樹にソフト部に入ってと何度も頼まれていた。
「んな急に言われてもなぁ…」
ナツはいきなりの誘いに少し迷っていた。
「ナツ、ソフト部に入ったら?」
隣りで話を聞いていたチエはナツにソフト部を進めた。
「チ、チエ?」
ナツはチエの言葉に驚いた。
「ホラ!チエも言いよるし!
ナツ!お願い!
マジ、晴の為にも!」
そう言って、美樹は頭を下げた。
先程から話に出て来ている晴とは、ソフト部のピッチャー佐川晴[サガワ ハル]。
「つか晴ケガしたって言ってたけど
それ直ったら、俺居らねぇじゃん!」
ナツは、晴のケガが直った時の事を言い、どうにかソフト部に入らないように事を運ぼうとした。
「あー、そっか」
チエは納得したような顔をした。
だが、美樹は奥歯をかみ締めるような何かを隠しているような顔をした。
「だいたい、お前ら
野球部と一緒で、予選で負けてたじゃんか?
もう一時試合しねぇだろ?」
ますます、美樹の顔が沈んでいく。
「…美樹?」
チエは表情の変わる美樹の顔を覗き込んだ。
「晴は…、
もう投げれないんだって」
「…は?」
「…え?」
ナツとチエは、
美樹の言葉を疑った。
「…肘が壊れたんだって」
「晴は…?
今日、学校来てんのか?」
「ん~ん。
…今月入ってから、ずっと引籠ってる。
しかもこんな時に、練習試合組んでて…
晴以外にピッチャーやれる子居ないし
たとえ居たとしても
メンバー足んないし…」
ソフト部は一チーム分の人数とマネージャー一人しか在籍していなかった…
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