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「…おい、このヌルヌルする奴の匂い、何とかならんか?」
「ならないな」
「…うう、鼻が曲がりそうじゃ」
「我慢してくれ。見ろ、白い泡がなぞっただけで黒に染まるぞ…」
「…それがどうした?」
「それだけ、汚いって事だ」
「…こんなの、汚れた内に入らんじゃろ…」
「せっかく整った顔をしてるんだ、ちゃんとすれば気品ぐらいは出るだろう?」
「…ん? なるほど、人間からするとワシは整った顔をしておるか」
「まぁ、そうだな。有体に言えば、可愛い部類に入るんじゃないか?」
その言葉を聞くと苦虫を噛み潰した様な表情を見せぼそっと言葉を吐き捨てた。
「なんともまぁ、吐き気がする話じゃな」
「ま、そう言うな。褒めたつもりだったが、聞き流してくれ。ほら、頭から流すぞ」
「お、おぅ」
家にある軟膏と包帯は常に少し多めに用意してあった。家主が生傷の耐えない生活をしているので、常備薬やら、救急セットは一式用意されている。少女は消毒液の臭いを嫌ったが、それでも一通りの応急処置をすると納得できないような顔で包帯で巻かれた躯を睨んだ。
「まったく散々じゃな」
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