【参幕】狩人 -The dog-

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「…人間、ワシは、お前にダシにされていたのか?」  跳ね上がる心音は、怒りからか? 躯の震えを抑えるかの様に…解りきった疑問を少女は口にした。 「何かあれば殺す心算だった人間が、実は殺されるかもしれないという歴然とした力を持つ人間だった。それだけのことだ。…逆上でもしたか? 妖の女。俺は識っていたぞ、お前達という存在を。解っていたぞ、何度も俺を試すような殺気を飛ばしていたことを。嗚呼、どうしようも無く思い描いていたぞ、またお前達の様なヤツが俺の前に現れる事を」  男の目は、殺気でギラついていた。抑えきれない興奮で、饒舌に言葉を紡ぐ。 「…言うではないか、いつでもワシを殺せた…そういう事か」 「たかが人間と、所詮人間と、括っていたのだろう? それ自体が、過ちだったと気が付いたか。…なんなのだ、とお前は聞いたな? …お前の疑問に答えてやろう。俺は嘗てお前達に、百鬼夜行に殺されかけた。ただ、それだけの死にぞこないの一匹の狗さ」 「…復讐か?」 「復讐? 何を言っている? お前達は俺達を殺しに来た、しかし俺は生きている! まだ生きて居るぞ。戦はまだ終わっていない、この俺が! 死滅するまで戦は終わらない!」 「…そして、ワシも殺すのか?」 「殺す? 随分と弱気になったモノだな。ただ殺されるなんてあり得ないだろう? 一貫してお前はそう動いていた筈だ。何も告げずに後ろから狡猾に俺の首を、心臓を、腸を狙っていたのだろう? しかし問答に問答で応じる器量が有るなら吝かでは無いが?」  つまり、話し合えと? 少女の眉がつり上がる。
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