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「毎日僕より早く来て遅くに帰ってるのは、部長だけですね。」
朝の6時50分だった。時実一(ときざね はじめ)はその日、初めて部長席に腰掛ける人物に話しかけた。男の名前は二宮(にのみや)という。40代半ばのまだ若々しい部長は、勤勉で有名なその若手社員の顔を見て仕事の手を止めた。
「仕事があるというのは、」
椅子ごと体を一の方に向けて二宮が呟く。
「とても幸せな事なんだよ。」
一は眩しいものでも見るように目を細めて二宮の痩身を見つめた。
デスクが5つばかりある手狭なオフィスに、ブラインドから朝日が柔らかな明かりを注いでいる。一が手に持った紙コップから香ばしいコーヒーの香りがしていた。
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