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施設課の事務社員3名、派遣が1名の計4名を含めた総務部の18名を束ねる人物が二宮だった。二宮の目の前に立つ一は6年前に入社してから2度目の異動で施設課のオフィスに流れ着いた。
ずば抜けて成績が良かったわけではないが、勤勉であることと柔和な性格が喜ばれ“激戦区”と呼ばれる部署に引き抜かれたのが2年前。
飛び交う怒号のような指示と鳴り続ける電話を朝から晩まで捌く内に、自然と早朝に出勤する癖がついた。
戦場での2年という時間が沢山の人を飲み込むサマを目の当たりにしてきた一は心を病み、次いで1か月前にはとうとう体を壊し入院の憂き目にあった。
運良く大事には至らず退院できたものの、そのまま元の激戦区に戻すにはあまりに不憫と思ったものか、社会復帰した一のデスクは現在のオフィスの末席に移動していた。
もしかしたら単純に、体を壊すような奴は戦力外だと思われたのかもしれない。人を駒のように扱う部署のことだけに、笑えない冗談だった。
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