episode.1 銀色の猫

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暖かな日差しに自然と耳が揺れる感覚に眉を寄せながら目を開ければかなりの年齢を迎えた大樹があり周りの木々も風に揺れ穏やかな森の風景が広がっていた。 鼻を擽る自生しているのだろう花の香りがまた眠気を誘うが遠くから何かの足音が聞こえてはゆっくりと身体をお越し顔を前足で洗うと伸びをしてから辺りを見回す。 「ったく、人が気持ちよく寝てるってのに…此処がチシャの言ってた世界か…。結構綺麗なんだな」 行動とは裏腹にのんびりと言葉を紡ぐも段々と近くなる足音に背後の大樹を見上げるとその手を掛けては爪を立てる事に謝罪しながら登り始める。 一番低い位置にある枝を目指し登りながら暫くすると息を切らしながら一人の少年が走って来ればその後ろを木々をなぎ倒す音と共に出て来た巨大な牙を生やし額から伸びる角がまるで三又の鉾に見える猪に似ているが目の4つある獣が現れた。 背には幾つもの矢が刺さっており痛みに正常な判断が出来ていないのだろう、極度の興奮状態なのか鼻息は荒く目の前にある何かを壊すことしか考えていないだろう。 「ブ、ゴガァァァァァ!」 「あ、あぁぁ…父様、母様…助け、助けてっ…」 「まだ、本当に子どもだな…一人、って言う訳じゃなさそうだ。偶然出くわしたコイツに驚いて退けようと威嚇したはいいものの返り討ちにあったって言う所か」 「ブッ、ブゴォォォォ!」 「い、やだ…いやだぁぁぁぁぁ!」 「…騒ぐなガキ、下がってろ」 流石に幼い子供が目の前で殺されるのは寝覚めが悪い為、あたりの魔素を少し取り込み初めての人の姿をとっては地に降り立つと目の前の巨躯を持つ猪を睨みつける。 一瞬怯んだのか動きを止めた猪の懐に飛び込んでは小さく息を吐くと共に腹部に掌を添え全ての力を込め打ち抜く。 ブルッと身を震わせては白い泡を吐きながら倒れる猪を見つめまだ息があることを確認してから背後を振り返るとあまりの恐怖に気を失っている子供を見て僅かに眉を寄せつつ封印が再び成される前に猪の背に刺さった矢を抜き傷の手当てをする。 「喰ったら美味そうだが今は腹よりも寝たい…おら、起きろ。元居た場所に帰れ」 「プギッ!?プギッ、プギィ…」  傷が治っては猪の横っ面を手で叩けば目を覚ました猪が威嚇しようとするも体の痛みがないことに気付き暫く見つめてきたが体を起こすと軽く礼をしてからその場を離れていった。
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