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白ローブの男の言葉を聞く限り後ろで気を失っている少年は何処かの国の皇子で共和国だかに向かう途中で先程の猪に出くわし弱い従者達は全員死んだと…この世界の兵士の強さ、大丈夫か?
そんな事を考えていれば結界内に入って来た男が皇子に歩み寄り息がある事を確認しては此方へと視線を向けて来るので顔を洗う。
「そのガキなら無傷だ。従者は全滅しちまっただろうが下手にここ等の獣を刺激したのが悪い」
「なっ、お前…人の言葉を喋れるのか!?」
「…あ?何を驚いて……………にゃおん」
自分が猫の姿だと忘れたまま白ローブに声を掛けては素っ頓狂な声を上げる姿を見て尾で地を叩いては事の次第に気付いた俺は普通の猫のように首を傾げながら鳴く。
押し黙った白ローブを見て何とかなったと思ってはその場を離れようと身を翻すも尻尾をむんずと捕まれ全身の毛が逆立つ。
「……今更猫の真似とか遅いだろ!はぁ…単刀直入に聞くがお前がこの結界を張ったのか?」
「みぎゃおん!?……チッ、そうだよ…そのガキが死にたくないとか言いながら気絶したからしょうがなくな…。まさか、初めてでこんなに上手く行くとは思わなかったがな」
「…猫が魔法を使うなんて聞いた事がねぇぞ」
「俺の可愛い尻尾から手を離せ…じゃねぇと、引っ掻くぞ」
「そう言われてもな…お前には付いて来て貰わないとならねぇし、逃げられたら困るわ」
「逃げないから離せ…ついでに俺に名前付けろ。俺には、名前がねぇんだ」
尻尾から手を離されては毛並みを直すように舐めていれば優しく頭を撫でられ目を見開いて白ローブを見上げては耳の裏や喉元まで撫でられ思わず喉を鳴らしながら擦りっ寄ってしまう。
口は悪いながらもその猫特有の愛らしい仕草に白ローブは夢中なのか撫でる手は止まらない。
「そう言えばお前綺麗な毛並みをしてるな。名前が無いって言うが誰かに飼われてたんじゃないのか?」
「俺は、誰にも飼われてねぇよ…。この世界に来たのも今さっきだし…」
「………まぁ、事情があるんだろう。取り敢えずシヴァ皇子を城に送り届ける。そしたら、お前の名前と処分を決める…それでも良いか?」
「…それでも良い。が、あまり目立ちたくはない…」
「考慮しよう」
そう言うと白ローブにシヴァ皇子ごと抱き上げられ初の転移を体験する事になった。
何か一言言えよ…と言う暇もなかった。
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