episode.1 銀色の猫

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初の転移体験だが元居た場所の風景からいきなり知らない場所に移るのはどうにも気分が悪くなって仕方ないと思いケホッと咳き込んでは口から毛玉が転がり出ては原因はこれかと思えば次は吐いてから転移しようと一人解決する。 目の前に聳え立つのは国中を見渡せるであろう広い展望台付きの豪勢な城だ。 どうやら城の周りには特殊な結界が張られているようで時折空を飛ぶ鳥達が通過する事で景色が歪むが目視確認は難しいだろう。 門番の前に白ローブがシヴァ皇子を抱きながら立てば衛兵達は皆ハッとしたような顔をして腕の中の王子の様子を見る。 「シヴァ皇子!ああ、白獣様が見つけて下さったのですね!」 「その件で王に謁見したいのだが取り次ぎ連絡の方を頼めるか?流石に無断で押し入るのは十色獣(トシキジュウ)の一員である私でも許されてはいないからな」 「ハッ、少々お待ちください!」 「…堅苦しい喋り方だな。…と言うか、十色獣って何だ?」 「そんな事も知らないのか?って、お前猫だもんな…後で説明してやるよ」 「俺との衛兵への態度の差違うだろ」 「こればっかりはしょうがないだろ…。俺だって本当は堅苦しい喋り方なんてしたくない」 「…公式の場に出る事が多い奴は大変だな」 猫に同情され何処か複雑そうな白獣と呼ばれた男が口を開こうとすれば衛兵が戻ってきて中に入るよう促すのでそのまま歩みを進めていく。 城の中は見た目の外見とは違いシンプルな城を基調とした爽やかな雰囲気を醸し出しており少なからずこの国の王は交換を持てるような人物のような気がした。 王の謁見の間に来れば猫をローブの中に隠し白獣はシヴァ皇子を玉座に座る国王の腕へと引き渡しては心配そうに髪を撫でる姿を横目に離れた位置に跪くと頭を垂れた。 「お久しゅうございます、ロードシルト国王。この度は、連絡の途絶えたシヴァ皇子を霊樹の森にて保護いたしましたので急ながら謁見を申し出た次第にございます。それと、最近の魔物の素行についても幾つかご報告が…」 「息子を、シヴァを良くぞ無事に連れて来てくれた。お前には、何時も迷惑をかけるな…白獣、いや…ゲイル。して、魔物の素行はいかに」 「有難きお言葉です…。一部の温厚な魔物達、また理性を持つ魔物達がここ最近異様なまでに殺気立っていて原因はまだ掴めておりません」 ゲイルは更に頭を垂れ悔しげに報告を始めた。
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