world2 裏切り ~back~

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「 し ・ ん ・ ちゃ ・ ん。 」 私の肩をつついた、そしてその名前を今だに呼ぶのは、ただ一人。 「華菜子ねっ!もうその名前で呼ばないでって言ってるじゃない。」 そう私は、性同一性障害で元男なのだ。 相変わらず、親友の華菜子は、‘ 信吾 ’の時のニックネームで呼んでくる。 「まぁ、まぁ、カタイ事言わずに、ウチの大学で知ってるの私ぐらいなんだし?」 「だから余計よ。」 バレたくないのに、この子ってたまにズレてるのよねぇ、 慣れもあるけどあまり気にしていなかった。 「そうそう、合コンあるんだけど、‘ さお ’ちゃんもくるぅー?」 さおちゃんってさっきのイヤミなのかしら、まぁそんな事より、 「いくいくー。いい男いるかしら?」 長年、我慢してきたんだもの、最近ようやく、 普通の男女と絡むのも慣れ、積極的に呑み会やサークルに、参加していた。 女になって数年は、‘ そっち ’系の街に行き、‘ そっち ’系の人とばかり絡んでいた。 この美貌と名前を手に入れたんだから、頑張って恋人探しをしなきゃ、 最も華菜子に邪魔されて、なかなか出来ないが。 「いるわよー。しんちゃんがいい男じゃない。」 コイツは、バカなの?なんでこんなキズつくような事ばっかり言うの?でも、私はニッコリ笑って、 「イヤだぁー。そんな冗談ばっかり言ってぇ。」 「……。バレた?いやぁーさおちゃん綺麗になったから、 ちょっとイジワル言っちゃったのぉ、ごめんね。」 その前に華菜子は、ボソッと何か言った気がしたが、嬉しい事を不意に言われた事に気持ちは、 いっていた、そうだから悪気はない子なのだ。 いつもの事だと…。 華菜子と出会ったのは、5年くらい前、まだ格好も男だった時で、高校生だった。 私は、なんとなく小さい頃から、性同一性障害じゃないかと感じていたが、 あえて向き合わないようにしていた。 親の体裁考えたりとか、今考えたら、くだらない事をぐちゃぐちゃ考えてた。 華菜子と出会うまでは、ずっと‘ 男のフリ ’をしてた。 華菜子は性格悪い所もあって‘ 同性 ’には嫌われるタイプだけど、私にとっては、 自分の殻を破るきっかけを作ってくれた、言わば恩人なのである。 そして、初めて‘ 同性 ’として仲良くしてくれた、女友達なのである。
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