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5年前、華菜子と出会う直前、私は男として、すでに限界がきていた。
好きな人ができても告白ができない、毎日 ‘ 男 ’ として男友達とじゃれ合う毎日、しまいには、女の子から告白…。
私が言うのもなんだけど、みた目は、まあまあいいので、結構モテたのである。
そして好きな人に、彼女が出来た、さすがにショックでたまらなかった。
その日は、雨だったんだけど、傘もささずにベタだけど、公園のベンチで、黄昏ながら大泣きしていた。
ザーザーと大きな雨粒が音を立てて、切なく声を出しながら泣いてる私にとっては、慰めてくれるような優しい音楽にも聴こえた…。
可愛い傘を持った女子高生が、こちらに近付いてくる、そして、私の目の前に立ち止まった。
「綺麗なおにーさん。こんな所でずぶ濡れだと、水も滴るいい男だけど、風邪ひいちゃうぞぉ~。」
それが華菜子だったが、能天気な声が心に突き刺さり、
今一番言われたくない、自分が男だと認識してまう言葉に、腹が立ってしまった。
「うっるさいわね。」
うっかりお姉言葉で返してしまったのである、誰にもみせた事なかったのにと悔やんでいた。
見上げると、華菜子は天使のように微笑んでいた。
「そっかぁーごめんね。お姉さんだったかぁ…。イケメンだったから、逆ナンしようと思ったんだけど、シッパイ!シッパイ!」
それを聞いて、私はクスッと笑ってしまった。
「あー笑ったなぁ。」
二人でクスクスと笑って、とても穏やかで落ち着いた気持ちになった。
「さっきのお詫びに、お茶奢るからさぁ、風邪ひいちゃうし、喫茶店でも行こ?」
プッまた笑ってしまった。
「それって逆ナン?」
「もぉ~。それでもいいから。ねっ?行こ?」
「うん。」
私は、釣られて、ニッコリ笑った。
華菜子は私を気遣って、人が少ない喫茶店を選んでくれた。
ハーブティーのいい香り、さっきの気持ちが嘘のよう、
とても落ち着く、それは華菜子のおかげでもあるなと思った。
「お姉さんはさぁーなんでお兄さんのまんまなの?」
私は、ギョッとした顔した、なんてストレートな子なの!!
「まぁいろいろ考える事が、あるじゃない。」
一回、お姉言葉をつかったせいか自然に、その口調でしゃべっていた。
「えーッ、だってもったいないよー。そんなに女顔のイケメンって事は、
女の子になったらすっごくカワイイし、綺麗になると思うよ。」
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