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私は、アッケラカンとしてしまった。
この子と話をしていたら、体裁だの、周りの反応だの、今まで大事にしていたものが、アホらしい事だと思えてくる。
「それか、そのまま、お兄さんでいてもカッコイイし。そういう街とかもあるじゃん。モテモテだよ。今でも十分キレイだもん。」
「プッ ハハハハ。なんなのあなた、こっちが悩んでたのがバカみたいじゃない…。うっ うっ。」
笑ってたはずなのにまた涙が、溢れ出してきた。
「うわーん。」
声を出して泣き、一番初めにカミングアウトした、させられた?
子がまさか、引かずに、
自分が一番欲しかった言葉をくれたのだから、ハンパない安堵だったのだ。
そんな人物に、真っ先に出会えると思ってなかったのだ。
「あっありあとう。」
ヒクヒク泣いて声が、うわずってしまった。
「もう 泣かないの!!泣かないで…。」
華菜子は、なぜか少し切なそうに、優しく言った。
「そうね、物は考えようよね。親にカミングアウトして、タイに行くわ。同じ辛いなら好きな事できる自分になる方がいいものね。」
「そうそう、物事は前向きによ。」
華菜子はウィンクして、私に同意した。
「あっそういえば、名前なんて言うの?私は、間宮華菜子、これからよろしくね。」
手を差し出され、私は少しモジモジしながら、
「…うん。今の名前は神崎信吾よ。」
ほんのちょっと、複雑な想いも乗せて、握手をした。
これが、華菜子との出会い、まさか初めてカミングアウトしたのが、見知らぬ子にするとは、思わなかった。
だけど、‘ 女友達 ’はできるか不安だったから、華菜子という存在はとても嬉しかった。
そして、合コン当日、私はドキドキ、ワクワクして、胸が高鳴っていた。
なのに最悪な状態で、ブチ壊されるなんて、私は考えもしなかった。
「じゃあベタだけど、自己紹介からいってみよー。俺、テッペイ。」
次々と皆、自己紹介していく。
なんかあの人、高校の時に好きだった人に似てる、なんか幸先いいスタートかもと思っていると、自己紹介が廻ってきた。
恥ずかしいけど、頑張らなきゃ!
「私は、神崎沙緒…」
と言いかけた瞬間である。
「この子は、神崎信吾でぇ~す。こんなに綺麗だけど元男でーす、
ちなみ私は、華菜子でーす。よろしくねっ。」
ザワザワしていたその場の空気が、一瞬で凍りついた。
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