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「おい、これやばいんじゃないか!?」
「みんな落ち着くんだよ!」
俺は立ち上がり声を上げた。視線が一気に向いてくる。
「…とにかく、今回こそー1000円でこの犬を助けようじゃないか!」
みんなが黙って俺を見ているのが分かる。振り返ればTVモニター。小さな体を動かしカメラに愛くるしい瞳をぶつけてはまた鳴く。
それは卑屈な「出してくれ」というメッセージに聞こえるのは俺だけじゃないだろう。
「さっき25000円、集まらなかったのは…誰かが出していないからだ。」
森田が小さくつぶやくとあたりがざわつく。
「そうだ、俺達は損しているんだからさっき払わなかった人が払えよな。」
健太の美声ではなく焦る地声が響く。
「健太!そうじゃない!とりあえず、今は確実に払うほうが大切だ。皆も玲王の言うとおりだ。」
ネロは声を上げてまとめていく。
そうして時間はまた0になっていく。そしてさっきの様に映像に金額が映っていく。0、0と続き…。
『でました…今回は…なんと32100円集まりました!それではこの犬は皆さんの熱意に応えて今回の殺処分の対象外となります。』
映像の奥で檻がゆっくりと上がっていく。そしてマスクをした二人の人間に抱えられてどこかに行ってしまった。
「ねぇ…、今ので助かったの?」
「さぁ、…まあ。良いじゃないの?」
あんまりしっくり来ない終わり方をしながらまた同じようにマイナス金額は増えていた。更に同様の説明後今度は白と黒の毛をした立派な大型犬が姿を現した。その姿に似合って檻の中でも大人しくしかも、堂々と座っている。
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