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立っているだけでじわりと汗が滲み、キャミソールが背中にはり付いて気持ちが悪い。
不快指数が高まる季節。
それが夏だ。
何だか浮かれているヤツも多いけれど、
「青春」なんてこっぱずかしい単語を平気で口に出来る奴等だけ。
私には関係ない。
今日までは…関係無かった。
今日からは…表面上関係を持て、という事。
らしい。
「いや、無理っす」
「答えは聞いてない。これは決定事項だ」
「いやいや、無理っす」
「恩に報いるチャンスをやろうって言ってるんだ。ありがたく思えよ」
「………」
目の前にエラソーに立ちふさがる男は、所謂私の幼馴染み。
名を櫻井玲という。
やたらと綺麗な字面に響きを持つ名前だけど、本人も無駄に綺麗な顔をしてる。
はっきり目頭まで切り込みを入れたような二重の瞳は切れ長で。
スッと通った鼻筋は整形疑惑を持たれても仕方ないくらいに綺麗。
女みたいに白い肌の細身なのに、弓道で鍛えた腕は意外と筋肉がついている。
身長も175センチと、男の中じゃ高い、って程じゃないけれど、女子からすれば十分合格の長身。
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