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壇上の前には二本の支柱に支えられた白いネットが掛かっていて、上級生達がその回りで黄色と青のラインが入ったバレーボールで遊んでいる。いつもの体育館なのに、違う所へ来た様な感じがして、2人は隅の方をコッソリと歩いた。義和が壇上の上へ腰掛けたので、藤と卓人も同じ様に腰掛け、投げ出した足を揺らした。
「クリア出来ないのってどこ?」
「ベータが出て来る所。あのボスってどうやって倒したらいいの?」
「あれは普通の攻撃じゃ効かないんだ。火の玉吐くだろ?あの後、少しの間だけバリアが消えるから・・・」
義和が丁寧に説明してくれるのを2人で真剣に聞いている内に、体育館で遊んでいた上級生が、
「こんばんは!」
と、大きな声で挨拶をし出した。余りにも大きな声で挨拶をするので、藤と卓
人は何事かと辺りを見渡す。
「やべっ!月島だ!」
義和がそう言って慌てて壇上から飛び降りると、藤は入口からゆっくり男の人が歩いて来るのに気が付いた。
白いジャージに濃紺のTシャツ。遠目からでも分かる背丈の高さは、近付くにつれ巨人の様に見えた。鋭い目が上級生達を見回して、少しだけ頷く様に頭を下げる男を、藤はジッと見つめる。格好良い顔をしているのに、よく焼けた浅黒い肌、ガッシリとした体格が威圧感を出していて、藤はその男を怖いと思った。義和が ’月島’ と呼んだその人は、藤達が居る壇上まで来ると、見慣れない顔の2人に目を向け、藤は月島の目元にある小さな傷を見つけて益々怖さを感じた。
「こんばんは・・・」
ぎこちなく藤と卓人が頭を下げると、月島は怖い顔をクシャと崩して笑顔を見せる。
「おう、こんばんは。義和、友達か?」
「近所の幼馴染!・・・です」
義和はいつもの調子で答えて、アッと思ったのか敬語を付け足した。
「ふ~ん、4年生か。入るか、バレー?」
バレーをやりに来たと思われて、藤は首を大きく横に振る。
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