第一章 藤 ~出会い~

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運動は嫌いじゃないが、バレーをやった事もない藤は、月島の言葉に尻込みしてしまったのだ。 「少しやってみる?」 義和は2人を見ながらそう言ってニヤリと笑う。 「うん、やる!」 乗り気な卓人の言葉に、藤はギョッとして卓人を見た。卓人はスポーツなら何でも出来た。走れば誰よりも早いし、ボール投げも4年生の中で一番だ。藤はこの時、卓人は義和が出来るなら自分も出来るに違いないと思ったのだと思った。 「卓ちゃん、帰ろうよ?遅くなるとお母さんに怒られるよ」 藤は体育館の時計に目をやりながら言ったが、既にやる気になっている卓人は、壇上を飛び降りて義和の隣に並んでいる。 「ハハ、遅くなるといけないから少しだけな。面白いと思ったらまた来ればいいから」 月島がそう言って笑う。月島の笑顔は一見した雰囲気を大きく変える程人懐こくて、藤は乗り気な訳ではなかったが、先程よりも月島が怖い人ではなくなっていた。
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