一章

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 縦横無尽に動く獲物ですら通じないのだ。 「くそっ!」  思わず悪態をつく。  この攻撃が無駄なのはジャンク自身がわかっていた。それでも本気で攻められたら一瞬で決められてしまう。故に手を止める訳にはいかない。  まさか、自分が素人と罵った者が憧れの狂神グラン=エクシブだとは思わなかった。 「さて、そろそろこっちからも行くぞ?」  にやりと笑い動き出した。  刃同士がぶつかり合い甲高い金属音が鳴り響くと同時に、エクシブは体を捻り、あっという間にジャンクの間合いにまで入っていく。  あまりにも一瞬で懐に入られ、思わず後ろに飛ぶジャンクだが、最早後の祭り。  引き寄せた鎖の先の剣を持つ左手は腕ごと掴まれ、ジャンクの首筋にはエクシブの剣があてられていた。 「まだ、やるか?」  盗賊時代の身のこなしも、この男には一切通用しない。  目線の先に見える鷲の翼を象ったレリーフが妙に美しく見える。  抵抗は無駄。
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