一章

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「元々は行き場が無い者たちだからな。それに比べればここは忙しいが居心地は良いはずだ」  ならず者の烙印を押された者には傭兵の仕事は回らない。  行く末は、裏の仕事や、盗賊など、やればやるほど表には戻れず、命すら狙われる。  二人はテランに挨拶するべく奥へと進んでいく。 この三ヶ月間で何度も足を運んだが、何時来ても皆忙しなく働いている。  三階建ての広大な建物、大型の船を停泊させる港に、数十台もの馬車を収容する納屋倉庫。  更には働き手や客として来た者や、行商人に船員など、多くの者たちの為に簡易宿や酒場まであるのだからその広さとラフェスト商会の大きさがわかる。  正直な話、エクシブはココがいなければ今でも迷ってしまう。  最初の一ヶ月は、エクシブが迷うたびに、元ならず者たちは見回りに来ていると、びくついていたものだ。 「リン! 何をボケっとしとるんかよ。おいてくからの」  故にこんなことを言われれば慌てざるをえない。 「す、すまない。おいていくのだけは勘弁してくれ」
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