一章

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 さっさと行ってしまうココを早足で追いかける。  建物は大きいが、テランの部屋は遠くはない。辿り着いた扉を軽く叩き、乾いた音を響かせてココは声をだす。 「師匠、挨拶に来たんだがよ。入っても良いかの?」  すると、扉の奥から声が返る。 「おお、ココか。入りなさい」  返ってきたテランの声に従い扉を開け部屋に入る二人。  広い部屋の中心に大きな机と壁際にある書類が山となった机に沢山の書籍が並んだ本棚。  テランが座る椅子の後ろには夕日に光る綺麗な海の光景が広がっていた。  だが、そんないつもの部屋に違いがある。 「ああっ、すまんの師匠。まさか客人がおるとは思わなかったからよ」  テランの机の前に立つ、スラッとした長身の人物。  長い髪に端正な顔だち。誰が見ても美人とわかるその人物は長い旅をしている者なのだろう。  見目より性能と耐久性に優れた感じの皮の服にどんな雨風も太刀打ちできそうなローブを羽織っていた。
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