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その日はオソウジロボットが現れてから10日ほど経った頃だった。
かなこの14才の誕生日の前の日、13才最後の朝は特別な朝になった。
あと30分もすれば夜が明けようかという4時半過ぎ。
毎日の襲撃で眠れない夜を過ごしていたわたしたちの頭上をサイレンの鋭い音と赤いライトが駆け巡る。もうテキパキとは動かない泥のように重い身体を常にぼんやりとする頭で動かして布団から出すと窓の外を見た。
サイレンの合図で皆が初めにすることはいつもオソウジロボットの位置の把握だ。
窓を開けると最初に襲撃を受けた第3寮が跡形も無く崩れ落ちて廃墟になっているのが見える。
「あそこだ……」
か細い声で、2つ下の男の子が外を指差して言った。
初日に比べて台数が減ったオソウジロボットたちはいつも通り「オソウジシマス」のかけ声で前進している。
疲れを知らないロボットたちはキャタピラーを回転させてわたしたちがいる第2寮を目指しているようだった。
「こっちに来る……!」
誰が早いか、それに気づくと寮生たちは一斉に外へ飛び出した。
力のない声で助けてと叫びながら、満員電車が駅に到着した時のように我先にと、狭い扉から溢れ出ていく。ガタンと音を上げて引き戸が外れ倒れても誰も見向きをしなかった。
かなこが隣の部屋で眠るアヤトを探しに部屋を出ると、隣の部屋からも我先にと寮生たちが飛び出していった。流れに逆らうようにかき分けて歩を進めると後ろから声がする。
「かなこ!お前何してんだ、逃げるぞ!」
後ろから腕を掴まれると強く引っ張られた。
よろけそうになりながら振り返ると、アヤトが「どっちだ」と辺りを見渡している。
その横顔が逃げ惑う周りの人たちの中で特別に浮き出て見える。
力強い腕や、頼もしい横顔はもうずっと大人の男の人に見えた。
「……パイアンの塔へ行こう!」
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