第1章

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パイアンの塔は学園の東の森の向こうにある、癒しの神パイアンがステンドグラスに描かれた塔だ。学園一高い塔だからきっとオソウジロボットは上って来られない。 二人は手を繋いでそのままパイアンの塔へ向かって走り出した。 わたしたちが暮らしていた第2寮の東の裏口を出て、背の高い樹が並ぶ森を抜けてパイアンの塔を目指す。 森は不規則に生える木々の根が絡まり合って地面が波打っている。 少しずつ明るくなっていく紫の空を遮断する木々のせいで辺りは薄暗く、不気味だ。 足元を取られそうになりながら、二人は全速力で走った。 昨日降った雨で少し湿った土が二人のスニーカーの裏にこびりついて、どんどん重くなっていく。 「オソウジロボット、こんな道なら来れないよね?」 キャタピラーではこんなゴツゴツの道来れないに決まってる。 きっとそうだ。だから大丈夫。 ヒリヒリ痛くなる肺を押さえて言うと、アヤトは、わかんない、とだけ答えた。 他の子供たちの悲鳴も森に遮られて遠くに聞こえる。 二人の足音と張り裂けそうな呼吸しか聞こえないほど遠くまで来ると、森が途絶えて小高い丘の上にひっそりと建つパイアンの塔が現れた。 「あった!」 二人は嬉しくなって見合わせると、 パイアンの塔に駆け寄った。 助かる!ここまで来たら大丈夫! その瞬間だった。 スニーカーについた泥でずるりと滑り、森と塔の真ん中でわたしはつまづいた。 膝をついて座り込む。 でも痛いのは擦りむいた膝でも、 芝生についた手のひらでもなく、 光が突き刺さったわたしの胸だった。 「かなこ!!」
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