0人が本棚に入れています
本棚に追加
白いパジャマにじんわりと赤い花が咲いた。
押さえた手の隙間から染みてくる血に、わたしは目を瞑って痛みに耐えた。
駆け寄ってきたアヤトの腕がわたしの体をぎゅっと包み込む。
「大丈夫。かなこ、大丈夫だからな!」
頭の上から降ってくるアヤトの声で
わたしは自分が死にそうなことに気がつく。
わたし、死んじゃうんだ……
アヤトのお嫁さんになりたかったのに……
恋人になって、夫婦になって、
子どもを産んで、
今度こそ家族を作って、
幸せに暮らしたかったのに……
目から流れる涙が大粒の雨のようにボタボタと落ち、胸を押さえる手の隙間から傷口に流れていった。
ザァァァッ
その瞬間森に大きな風が吹いて、途端に周囲が静かになった。それはまるで時が止まる魔法のように空気そのものが止まっていた。
手元を見ると血も止まったいた。
それどころかみるみるうちに血は消えていき、撃たれたと思ったら血糊だったみたいに痛みもなく、ゲームで魔法使いが癒しの魔法をかけてくれたみたいに傷も消えていった。
「え、どうして?」
手を外すと、パジャマは真っ白のままだった。
「ヤットミツケタ……ヤットミツケタ……」
わたしを撃ったらしい一台のオソウジロボットが頭をクルクルと回転させてそう繰り返している。
「ミツケタ……ミツケタ…ヤットミツケタ……」
森から次々と他のオソウジロボットが集まってきて言葉は合唱になった。しゃがみこむわたしたちを囲う。
一体何が起こっているの?
「選ばれしコドモはお前か……」
最初のコメントを投稿しよう!